被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト
玄海原発:町が描いた夢/6 監視強化がカネを招く
毎日新聞(2009/03/10)

 08年9月3日。福岡市内で、早稲田大の白井克彦総長を囲み、福岡を中心とする政財界の懇親会が開かれていた。

 九州電力の松尾新吾会長はあいさつで、2010年に唐津市に開校予定の早大系列の中高一貫校に応分の負担を表明したという。そして九電は今年2月、同校を設置する学校法人への寄付を発表した。事業費の約半分にあたる20億円だった。

 懇親会にも出席した坂井俊之市長は「長年、地域に寄与してきた九電としても力になれたら、ということだろう」と、喜んでみせた。

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 唐津市は05~06年に周辺8町村と合併し、原発に隣接する県内唯一の自治体となった。玄海町も合併協議会に参加していたが、「上下水道整備を計画通り進めたい」などとして03年、離脱した。唐津市にとっては、同町が持つ約100億円の基金を丸々取り逃がした形だ。

 同市の07年度の実質公債費比率は19・7%で、地方債の発行に県の許可が必要な「許可団体」(18%以上)。08年の12月議会で坂井市長は言った。「合併の優遇措置がなくなる2020年度には『財政健全化団体』への移行が懸念される」。もし移行すれば、国に財政再建計画を提出しなければならない。目の前の原発マネーは魅力的に映る。

 坂井市長は08年、30年以上運転の原発がある道県に交付される「原発施設立地地域共生交付金」(25億円)の配分を県に求める方針を早々に表明した。この交付金に県は今も手を付けていない。

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 玄海原発3号機のプルサーマル計画に鎮西町、肥前町、七山村の各議会は反対した。唐津市はそれらの町村と合併したことで原発の10キロ圏内に玄海町の4倍の人口を抱えることになった。

 だが、唐津市は県や玄海町と違い、九電と安全協定を結んでおらず、原発の計画に了解は求められない。

 それでも同市は06年に「安全協定の確認書」を県と交わし、県の立ち入り調査に市職員も同行できるようになった。

 合併が同市の発言力を強めた形だ。こうした「監視の強化」が、結果的に原発マネーを同市に招き入れた。

 核燃料サイクル交付金15億円(唐津市枠分)のほか、県枠の同交付金15億円も同市内の事業に使われる。核燃料税(県が燃料価格に応じて九電に課す法定外普通税)も09年度から初めて玄海町と同じ7億5000万円(5年間)が同市に分配される。

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 原発をめぐる巨額のカネに、地元自治体の“目”が曇ることはないのか。

 古川康知事は「あってはならないし、そうはなっていない」と強調するが、国の交付金制度は地元自治体の判断を鈍らせる可能性をはらむ。

 03年度以降、「安全性を確保するため」に停止中の原子炉は「運転中」とみなされ、交付金が支払われた。だが06年度に規則が変更され、国が安全を確認して3カ月を過ぎれば、そうした「みなし」の扱いを受けなくなり、同時に交付金も入らなくなった。「アメにムチを交ぜるようなやり方だ」との声もある。

 古川知事が05年の国の審議会で立地道県を代表して述べた意見に、地元の危惧(きぐ)がにじむ。「安全性確保は第二で、運転再開を最初に考えなくてはならなくなるという意見が(立地県から)あった」=つづく



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Posted by 昏君 at 19:48│Comments(0)玄海原発
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平田義信