被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト

2009年03月21日

動きだすプルサーマル

動きだすプルサーマル発電 推進、反対、両者の意見聞く

 国内初のプルサーマル発電が今年11月にも、佐賀県玄海町にある九州電力玄海原子力発
電所3号機で始まる。使用済み燃料を再利用し、ウランを節約する同発電は、国が進める「核燃料サイクル」計画に不可欠な取り組みだ。同計画は、資源がほと
んどない日本のエネルギー問題の展望を開くとの期待がある一方、その安全性や必要性を疑問視する声も少なくない。同発電を推進する九電の段上守・常務執行
役員(取締役、原子力発電本部長)と、異議を唱える吉岡斉・九州大大学院比較社会文化研究院教授(科学史)に話を聞いた。 (聞き手は経済部・曽山茂志、
佐賀総局・東伸一郎)

安全性の確保はできる 九州電力原子力発電本部長 段上 守氏

 ‐プルサーマル発電は、玄海原発3号機で国内初の実施になる。

 「地元には7月末、定期検査内容の事前説明を行う際、プルサーマル発電実施を具体的に報告することになると思う。後に続く中部電力や四国電力に情報提供しながらミスをせず、しっかり責任を果たしたい」

 ‐プルサーマル発電はなぜ必要なのか。

 
「原発は温室効果ガスを排出せず、環境に配慮した発電施設として世界的に建設の動きが広がっている。ウラン燃料は大切に使わないといけない。需要増に伴
い、今後はウラン価格も上昇するだろう。(核兵器に転用できる)余剰プルトニウムを持たないという国際公約も守らないといけない」

 ‐原子炉内で出力をコントロールする制御棒の利きが低下するなど安全性の不安が指摘されている。

 
「制御棒の利き方が変わるのは確かだ。ただ、これまででもウラン濃縮度が高い高燃焼度の燃料を導入した際も、制御棒の利き方は変わったが、燃料の配置を工
夫するなどして安全性は保てた。プルサーマル発電の場合も、ウラン燃料とMOX燃料の組み合わせ方や配置を工夫することで安全性は十分に確保できる」

 「そもそも原子炉内では、ウラン燃料のみを使う従来の運転でも、プルトニウムが発生し、一緒に燃えている。原子炉はプルトニウムを燃焼することも計算されている。MOX燃料を使用しても炉内の状況(性能)が大きく変わることはない」

 ‐開始までの安全確認のスケジュールは。

 「MOX燃料が到着後、輸送容器から取り出して自主的に検査する。6月ごろ、国の検査を受けたあと、9月下旬‐10月上旬、原子炉に装荷(装てん)する。10月中旬、試運転を始め、制御棒の利き方などを確認する。その上で11月中旬から通常運転に入る予定だ」

 ‐使用済み燃料を再処理した後に出る高レベル放射性廃棄物の処分場は未定。青森県六ケ所村の再処理工場もトラブル続きで本格操業が大幅に遅れている。核燃料サイクルは構築できるのか。

 「再処理工場は詰めの段階で生みの苦しみに直面している。先行するフランスでも最初はてこずった。技術的に乗り越えられると信じている」

 ‐使用済み燃料を再処理するまで一時的に保管する中間貯蔵施設について、玄海原発がある佐賀県玄海町の町長が受け入れに積極的だ。

 「非常にありがたい。国内で発生する使用済み燃料を六ケ所村の再処理工場ですべて対応するのは能力的に不可能。追加の能力を持つ再処理工場ができるまで保管する中間貯蔵施設が必要だ。九電でも2020年までに必要になると考えており、機が熟せば具体的な検討に入る」

◆だんがみ・まもる 1967年九州大工学部卒、同年4月九州電力入社。川内原子力発電所長などを経て、2007年6月から現職。64歳。


コスト見合う利点なし 九州大大学院教授(科学史) 吉岡 斉氏

 ‐プルサーマル発電は安全なのか。

 
「プルトニウムの毒性はウランの10万倍。事故が起きた場合の汚染は深刻になる。MOX燃料はウランとプルトニウムを混ぜたものだから、発熱や熱伝導が不
均等になりトラブルが起きやすくなる可能性がある。それに、プルトニウムは核分裂を起こすまでのスピードが速いので、通常のウラン燃料用の制御棒ではコン
トロールができにくくなるだろう」

 ‐電力会社は海外の実績や国内での試験運転でMOX燃料を理由にしたトラブルがないことから安全だと主張している。

 「確かにプルトニウムを混ぜるのはMOX燃料全体の3分の1程度だから、ウラン燃料よりも大幅に危険度が増すわけではない。ウラン燃料を使っている原発でも事故の可能性はあるわけで、今ある原発と危険度に大差はない」

 ‐そもそもプルサーマル発電は必要なのか。

 
「日本が保有する(核兵器に転用できる)余剰プルトニウムを処分するという意味では認める余地はある。しかし、国はプルサーマルと(使用済み核燃料を再処
理する)青森県六ケ所村の再処理工場の稼働を連動させた核燃料サイクルを進めようとしている。国内で新たにプルトニウムを取り出して処理するためであるな
ら賛同できない」

 ‐国や電力会社は「ウラン燃料を有効活用することは、エネルギー資源の大半を輸入に依存する日本の切り札になる」と核燃料サイクルの意義を強調するが。

 「メリットは厄介者のプルトニウムを処理するだけ。デメリットが大幅に上回る」

 ‐デメリットとは。

 「資源の有効活用というが、プルサーマルで節約できるウランは1割程度にすぎない。ウラン価格は下がっている。世界的な不況で投機資金もなくなり、今後10年は安定供給されるのが確実だ。危険なプルトニウムを保有すれば、犯罪やテロに対する備えも必要になる」

 
「六ケ所村の再処理工場は試運転はしているが、設備の不具合が続き、完成時期が当初より10年以上も遅れている。巨額資金が湯水のように使われているが、
結局、それはわれわれの電気料金に跳ね返る。プルサーマルを含めた核燃料サイクルは不確実で危険。高いコストに見合うメリットがなく、やめるべきだ」

 ‐とはいえ、順調にいけば11月に全国初のプルサーマル発電が玄海原発で始まる。核燃料サイクルが動き始めるが、受け入れた佐賀県と玄海町に今後、何を求めるか。

 「自治体には住民の安全を守る責務がある。国策だからと言って逃げることなく、自ら判断しなければならない。独自に安全調査をするなど監視を続けてほしい」

◆よしおか・ひとし 1953年生まれ。東京大理学部卒。和歌山大助教授などを経て現職。内閣府の原子力委員会の専門委員。55歳。


      ×     ×     ×

■プルサーマル発電

 
原子力発電の使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、ウランと混ぜて製造する混合酸化物(MOX)燃料を、既存の原発の軽水炉で燃やす発電方
式。海外では1960年代から2007年末までにドイツ、フランス、スイスなど9カ国57基で計6018体が使用された。

 日本はウラン節
約と「余剰プルトニウムを持たない」とする国際公約を守る目的で1997年に同発電の推進を閣議決定。九州電力、中部電力、四国電力は今年3月初め、同燃
料製造を委託したフランスから共同で燃料輸送を開始。5月後半に国内に到着し、燃料を交換する定期検査の日程上、9月下旬‐10月上旬に同燃料16体を装
荷(装てん)する九電の玄海原発3号機が国内第1号になる。

 電力業界は、10年度までに国内の原発16‐18基で実施することを目指しているが、先行した東京電力や関西電力が燃料データ改ざんなどで出遅れており、達成は困難になっている。

=2009/03/21付 西日本新聞朝刊=




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Posted by 昏君 at 23:34│Comments(0)玄海町
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平田義信