被災者をNPOとつないで支える合同プロジェクト
 この記事は農水省OBが書かれたものですが、石破農水相は等々『農協』と言いう聖域に手を付けるようです。
 もし内容の通りなら日本農業が生まれ変わる、千載一遇のチャンスだと思います。
 大いに応援したいですね。

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農業開国論 山下一仁 【第12回】
農協トライアングルがついに崩壊?
減反見直しの旗を立てた石破農水相の賭け

                    ダイヤモンド・オンライン(2009年01月30日)

 2008年12月28日某テレビ局の農業問題特集番組で、筆者の「減反政策を廃止して、価格低下分を主業農家に直接支払いすべきだ」という主張に対して、「いろいろな角度から減反政策について見直す。タブーを設けず、あらゆることが可能性として排除されない」と発言した政治家がいる。農政トップに立つ石破茂農水相その人である。およそ行政担当者がある政策を見直すと言う場合、その政策は問題を含んでいると言明するに等しい。

 また、石破農水相は2008年末に農水省の官房長の辞任に伴う幹部職員の異動を発表した。官房長の辞任は彼が担当者だった総合食料局長時代の汚染米処理の不手際の責任をとったものと省の内外では受け止められているが、汚染米の責任は大臣と事務次官が福田前総理に事実上更迭されたことで処置済みだ。もう少し想像力を働かせると、この人事に込められた石破農水相の意思が見えてくる。

 振り返れば、小泉内閣の時代、農水省には「改革を唱えなければ人ではない」式の「にわか農政改革者」が跋扈、横行していた。新人の採用文書の中で農水省は「改革の省」ですといったPRもしていた。これらの人達は2007年民主党の農家への「戸別所得補償」の主張の前に自民党が参議院選挙で大敗し、農政が「逆コース」に入る中で元の「守旧派」に復帰した。当時の事務方の大幹部は農水省の文書から「改革」という文字をひたすら消しまくったという。

 「逆コース」の中で、減反をこれまでの国・都道府県・市町村の行政が推進するのではなく農協に任せるというコメ政策の改革は実施初年度である2007年に撤回され、農水省、都道府県、市町村が全面的に実施するという従来どおりの体制に戻った。また、減反も強化された。

 しかし、高米価、高関税を維持する以上、WTO交渉でその代償として低関税の輸入枠のミニマムアクセス米の拡大、これによる食料自給率の低下、農業の衰退は避けられない。妥結寸前までいった2008年7月のWTO閣僚会議の際、農水省に集まった自民党農林関係議員は、なすすべもなくまるで通夜のようだったと聞く。これはアメリカとインドの対立で妥結しなくてすんだものの、農政改革をしなければ、日本の農業に未来はないという覚悟が農水大臣を引き受けた石破氏にはあったはずだ。

 任命する側にも、その想いがあったはずだ。福田前首相は農政改革をやりたかったのだが、実行に移せなかった。その意思を継いだ麻生首相も、農水相になりたくて仕方がなかった典型的な農林関係議員からではなく、農政に明るく、かつ改革の意思のある人物として、余人をもって代え難い石破氏に白羽の矢を立てたのだ。

 同じ自民党総裁選を戦った候補者として、麻生首相は石破氏の農政についての理解と志の高さをわかっていたはずだ(といったら、言いすぎだろうか)。

 辞任した官房長は、2007年の米価低下時に減反強化を進めた担当の総合食料局長だった。もちろんその政策を要求したのは農協と自民党農林関係議員だが、官房長辞任という石破農水相の人事は、「逆コース」を反転させ、構造改革を推進するための布陣ではないだろうか。

 汚染米事件発覚後の省内改革チームのメンバーも「正論を言って疎んじられてきた」(石破農水相)若手課長ら約10人で構成した。民主党の小沢代表は「役所はキーマンを2~3人押さえておけば動かせる」と言っている。

 実際、石破農水相は年末の人事で農水省には稀な筋金入りの一人の「農政改革者」をキーマンとして政策決定の中枢に据えた。今回の人事は石破農水相の改革断行の意思表示と思われる。しかも、これまでの農水省の改革では、戦後の松村謙三と和田博雄の農地改革などのごく一部の例外を除き、事務方が主導して大臣は神輿に乗っているだけだった。

 今回は大臣がリーダーシップを取っているのだ。最終人事権を持っている大臣と一人のキーマンさえいれば、省内の有象無象はついてくる。

減反廃止から維持に転向した
民主党の気になる今後の出方


 そもそも減反見直しという発言自体、政治家としては、減反を支持してきた農協を敵に回し選挙で落選するかもしれないという政治生命を賭けたものである。筆者が発言するのとは重みが違う。町村官房長官が2008年5月に減反を見直してはどうかと発言したところ、自民党農林関係議員から猛反発を受け、即日発言を撤回させられている。

 以下に、私が農水省を辞めた2008年3月のある政治家とのやりとりを紹介しよう。

筆者:「あなたが農水大臣になっていれば、私は農水省を辞めなくてすんだのに……」

某政治家:「あなたの本を読んで地元で講演をすると、この選挙区から出て行けと農協幹部に言われる。講演だけならともかく大臣になって改革の責任者になるときつい」

筆者:「それならあなたが総理になって選挙と関係のない人物を農水大臣にして改革すればよい」

某政治家:「それは面白い」


 ついにルビコン河を渡った石破農水相の勇気を称えなければならない。

 改めていうまでもないが、減反をやめれば米価は低下する。高いコストで生産している零細な兼業農家は農地を貸し出すようになる。現在は受け手の主業農家も2000年以降の米価低下で地代負担能力が低下し農地が引き取れられずに耕作放棄されているが、主業農家に直接支払いを行って、その地代負担能力を高めてやれば、農地は主業農家に集積し、規模が拡大し、コストは低下する。こうして日本の米作の価格競争力が高まれば、アジア市場に米を輸出することが可能となる。

 週末片手間にしか農業を行えない兼業農家より、規模の大きい農家の方が肥料や農薬の投入量を減らす環境に優しい農業を行うことができる。零細な兼業農家も地代所得が増加する。農協が主張する零細農家切捨て論は誤りだ。兼業農家が農業から退出すると、JA農協の政治力も減退する。

 もちろん、自民党農林関係議員が石破農水相の動きをただ傍観することはないだろう。農協とともに守旧派の巻き返しが予想される。減反政策こそ米価で農家の所得を保障しようとする「戦後農政の根幹」であり、これによって農協は発展し、自民党農林関係議員を支えてきたからだ。

 減反見直しとは、この農政の本丸に切り込もうとする試みである。しかし、結論がどうだろうと、減反廃止等の構造改革の推進、逆コースからの反転攻勢という旗を立てたことに石破農水相発言の意義がある。

 農商務省時代からの歴代農相のなかで傑出した人物に、事務次官時代に昭和農村恐慌に対処するため農村経済更生運動を展開するとともに戦前小作人の地位向上に心血を注いだ石黒忠篤、戦後いち早く農地改革の必要性を強調し第一次農地改革を行おうとした筋金入りの自作農主義者である松村謙三、吉田内閣で事務次官を飛び越えて局長から大臣になり第二次農地改革を実行するとともに後に経済安定本部長官として戦後の経済復興に尽くした和田博雄がいる。

 業績としてはこれらの人物に劣るが、コメの統制撤廃論やJA農協からの政治活動・金融事業の分離を主唱した河野一郎、農地流動化のための事業団構想を提言した赤木宗徳も農政の歴史に名をとどめている。

 このうち、石黒と和田は、経済学者シュンペーターの高弟である東畑精一から明治百年の農業十傑に数えられるとともに、吉田茂をして「農民のための農林省を代表するのは石黒忠篤と和田博雄だ」とまで言わしめている。減反見直しという旗を立てた石破農水相もこれらの人物の域に達しつつある。

 石破農水相の動きに減反について参議院選挙後マニフェストを変更して廃止から維持に転向した民主党はどう出るのか。

 民主党の農林関係議員と自民党の農林関係議員は大同小異である。民主党が減反維持に態度を変更したのは、米価を下げて民主党が提案している販売農家全てに対する戸別所得補償(直接支払い)を行うと米だけで1兆円もの財政負担が必要となり、そうなると農業土木予算に切り込まざるを得ないと判断する農林関係議員がいたからだろう。

 しかし、小沢代表の「関税ゼロでも食糧自給率100%」というそもそもの主張には減反廃止があるはずである。民主党は2007年の参議院選挙の経緯から減反を支持してきたJA農協グループに敵対する姿勢を強めている。

 また同党にも改革派がいる。石破農水相の賭けに国民の支持が集まるようになると、選挙を意識した民主党も再度態度を変更する可能性がある。民主党からも目が離せない。

 いずれにせよ今年は総選挙の年だ。守旧派の総本山だった自民党からも石破氏という改革者が出てきたことで、日本の農業、農政もようやく変わると期待したい。

 減少を続ける国内米消費を前に、減反を拡大して食料安全保障に不可欠な農地を減少させ、高関税の代償としてミニマムアクセス米を拡大して食料自給率をさらに低下させ、農業を衰退させるというこれまでの農政を維持するのか。価格を下げて拡大するアジア市場への輸出という新しい需要を開拓し、農地資源を維持しながら食料自給率を向上させるという強い農業を実現するための農政改革を果断に実行するのか。道は二つに一つだ。

 われわれ国民、消費者、有権者は、候補者がどちらの立場をとるのか、それを明らかにさせたうえで一票を投じたい。

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聖域への挑戦【農業行政】山下一仁
(経済産業研究所上席研究員)

東京大学法学部卒業。同博士(農学)。1977年農水省入省。同省ガット室長、農村振興局次長などを経て、2008年4月より経済産業研究所上席研究員。主著に『国民と消費者重視の農政改革』(東洋経済新報社)、編著に『食の安全と貿易』(日本評論社)など
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Posted by 昏君 at 22:10│Comments(0)...((((=・o・)ノ ゴーゴー♪
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