2009年06月22日
玄海町 途切れぬ恩恵で公共事業
玄海町 途切れぬ恩恵で公共事業
2009年06月22日
九州電力玄海原子力発電所が営業運転を始めて34年、地元玄海町は、受け入れの「見返り」にあたる多額の「原発マネー」で潤ってきた。集中的な公共事業
は、産業に乏しい東松浦半島突端の小さな町を大きく変貌させた。今秋にも始まる国内初のプルサーマル発電の受け入れも、また新たな「見返り」をもたらす。
「マネー」は原発と立地地域をどう結びつけていくのか――。第1弾はまず、そのからくりを国の「交付金」を通して見てみた。(伊東邦昭)
住民の理解を得て電力を確保するため、原発に限らず発電所を新規立地する自治体、すでに立地済みの自治体に、国が金を出す「電源三法交付金」という仕組み
がある。とりわけ、放射性物質を使うため、住民が不安を抱くことも多い原発については、着工前から営業運転終了まで、その手厚さが際だっている。
原発関連の交付金は、もとをたどれば、電気利用者が支払う電気料金だ=図。電力会社は電力を1キロワット時販売するごとに37・5銭の電源開発促進税を国
に納める。1年間の全電力会社分の合計は3510億円(09年度予算)。この一部が原子力の技術開発や人材育成に回り、残りが全国の原発周辺地域へ交付金
として配られていく。
玄海町の09年度一般会計当初予算は72億円。財政規模の小規模な町にとって、交付金頼みで公共事業を次々とできる魅力は大きい。同町が初めて原発関連の
交付金を受けたのは、1号機の営業運転が始まった75年度=グラフ。地元の公共施設建設が目的の「電源立地促進対策交付金」だった。
町はさっそく初年度、町道19路線の舗装・改良に約1億9100万円、小学校2校のプールと中学校1校の運動場整備に約1億200万円を充てた。町財源か
らの持ち出しは事業費のたった約4・3%だけ。4号機完成まで24年間、町はこの交付金で公共事業を続け、その額は累計約120億余円にもなった。
期限つきの交付金もあれば、運転終了まで出る交付金もある。複数の交付金を組み合わせ、町は34年間途絶えることなく恩恵を受けてきた姿が浮かび上がる。
そして08年度、新たな交付金を受け始めた。3号機でのプルサーマル発電に伴う「核燃料サイクル交付金」だ。
原発から出る使用済み核燃料を再処理して再び原発で燃やすプルサーマル発電は、国が推進する国策「核燃料サイクル政策」の一つだ。安全性や経済性を巡り異
論もある施策のため、国は、受け入れた都道府県ごとに、「見返り」として地域振興名目で計60億円を渡す仕組みを整えた。佐賀県は、割り当ての半分に当た
る30億円を玄海に回すつもりだ。さっそく08年度には約6400万円を支給した。
「見返り」はほかにもある。国は町に対し、これまでも出してきた「電源立地地域対策交付金」を、05年度から5年間、毎年2千万円ずつ上乗せした。「プル
サーマル実施に向けた理解促進活動を支援するため」だ。交付金を使って国策を強く進めようとする国の姿が透けて見える。
町は、この2つの交付金を元手に、薬用植物を九州大学と共同研究するための栽培施設を建設中だ。「町にある原子力というイメージを和らげる」ことを、施設建設の効果に挙げている。総事業費約12億円。町の税収入などの財源からの持ち出しは3割にとどめるつもりだ。