2011年06月30日
【詳報】海江田経産相、佐賀県自治体首長との会談内容
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【詳報】海江田経産相、佐賀県自治体首長との会談内容 | ||
停止中の九州電力玄海原発(東松浦郡玄海町)2、3号機の再稼働を求め、海江田万里経産大相は29日、古川康知事や岸本英雄・玄海町長らと相次いで会談した。企業の西日本シフトが進み、全国的に電力不足の懸念が高まる中、海江田経産相は「深刻な事故が起きた場合の対応を含めて、安全対策はしっかり取られている。原発の安全は国が責任を持つ」と述べ、運転再開を認めるよう要請した。
■古川康・佐賀県知事とのやりとり
知事 大臣は先日、安全宣言をされたが。
経産相 直接的な原因は、地震後の津波による全電源喪失。3月30日の緊急安全対策で喪失時の電源や冷却水など安全性を確保した。6月7日には水素爆発など過酷事故への措置をし、さらなる安全性を確保した。
知事 安全性が確保された浜岡原発をなぜ止めたのか。
経産相 東海地方で30年以内に地震が起きる確率は87%。今回の地震で周期が分かったことだが、これまで福島は地震発生周期がなく、玄海と同じ0%だった。浜岡とは違い、玄海で福島を襲った津波や地震の可能性は低い。中部電力の原発依存度が15%と低いのも考慮した。
知事 浜岡を止めるとほかも、という声があることを考えなかったか。
経産相 危ない所、地震や津波の可能性が高い所は政府が責任を持って止める。全体を考えると安全性が確認された所は再稼働してほしい。
知事 福島が収束してないのに、なぜ安全か。
経産相 緊急安全対策は福島事故の経験から学んだ教訓を実際の安全対策で実施した。6月7日はそれまでの過程で学んだ措置を盛り込んだ。
知事 九電は8月まで燃料を確保できたという。急いで再稼働を考えなくてもいいのでは。
経産相 大震災後、西日本は日本経済全体を支える役割がある。電力の制約でその役割を果たせなければ、日本経済に与える影響は大きい。
知事 安全性の確保、県議会の議論、立地町の意向を踏まえ判断する。
経産相 安全性の確保は終わりではない。ただ2度の安全対策で2、3号機は再稼働していただいて結構。国が責任を持つので、ぜひ理解してほしい。
■岸本英雄・玄海町長とのやりとり
町長 大臣の口から国が安全を保証して「これから頑張ってやる」と宣言してもらいたい。
経産相 全電源喪失に備えた緊急安全対策とシビアアクシデント(過酷事故)が起きた場合の対策を電力会社に求め、九電にはしっかり安全を確保してもらっている。これまでも保安院が検査しているが、私も今日、短い時間で駆け足のような形だが、原発を視察してこの目で見てきた。
安全性の確保については、国の責任において対応したい。新しい知見が得られた場合は、さらなる安全性を高める努力を続けていかなければならない。九州の経済のためにも、電力供給の不安をなくすことが大切。自治体のみなさんにとって厳しい判断になるだろうが、再稼働について了解をいただきたい。
町長 町議会で「再開してもいい」との意見をもらっている。国が安全を保証することがはっきりすれば唐津市長の意見も聞き、長い時間を置かずに九電に答えたい。
国がしっかりとした宣言をしてくれれば住民、国民に安心感を与える。国が強い監視の目を向け、ヒューマンエラーのない対応を続けてもらうことを忘れないでもらいたい。大臣に来ていただいたが、正式に判断するのは後日にしたい。
経産相 最後は機械を動かすのは人。まさに町長の言う通りだ。事故はあってはならないことで、ならないようにするが、事故が起きた場合、住民を守るということについては国が後押しし、責任持ってやっていく。最終的には、私が責任を持つ。
■会談後の記者会見 海江田経産相・岸本町長・古川知事
海江田万里経産相「一問一答、誠意を持って説明した」
-玄海町長と佐賀県知事に相次いで会談したが、手応えは。
経産相 玄海町長からは一定の理解が得られたと思う。知事にも意を尽くして説明したが、どう判断されるか、我々は「まな板の上の鯉」だ。誠意は通じると思う。
-知事との会談で、菅首相との再稼働問題に対する認識の違いを聞かれたが。
経産相 総理には今日の件について電話で報告している。「しっかりやってきてほしい」と言われており、その意味では私と総理に意見の違いはない。
-県議との会談では厳しい意見があった。
経産相 県民の厳しい声を代表されていると感じた。短い時間だったが、誠意をもって説明した。あとは県議会の方が議論をして、決めていただくことだと思う。
-なぜ、佐賀が最初の訪問地なのか。
経産相 私どもが行きたいと言っても、地元の事情もある。押しかけるわけにはいかない。今回は佐賀県から、しっかり説明してと話があった。
-夏の電力需要のピークが近い。この時期の要請は供給不足になる恐れがあるからなのか、安全問題がすべてクリアされたからなのか。
経産相 安全問題がすべてクリアされなければ、お願いすることはない。それが大前提だ。その上で、南九州では梅雨明け、佐賀も大変暑くなっている。震災後、西日本が日本の産業や経済を立て直すために重要な役割を担っていることも考慮している。
岸本英雄・玄海町長
-大臣は再稼働への了解を求めた。どう受け止めたか。
町長 大臣がわざわざここまで来て、自分の口から「国がきちんと対応する」と言ってくれたことは心強い。九電には後日、意向を伝えたい。いつ、どのようにというのは頭の中でまとまっていないが、私の判断を一定、固めさせてくれた。
-九電に意向を伝える具体的な時期は。8日には県主催の説明会も予定されているが。
町長 説明会は既に1回開催されている。2回目の動向を見て(の判断に)になるのか、それよりも前になるのか、まだ整理はできていない。7月1日の県議会原子力対策特別委員会の議論は興味を持って聞きたい。
-地震、津波の対策は十分という認識か。
町長 大臣はそのことをはっきりと言い、自らの目で(玄海原発を)見てきたとも言った。EPZ(防災対策の重点実施地域)の見直しやヒューマンエラー、テロへの対策は今後も国に求めてきたい。
-不安に思う県民は多く、唐津市など隣県自治体は慎重姿勢だが。
町長 大臣は今月18日の記者会見で安全を宣言し、今日もここに来てしっかり対応すると明言してくれた。これから1、4号機も定期検査に入る。そうなると、九電の説明では電力供給に余裕がなくなる。今後の産業を考えると、電力不足に対する不安の声も多い。町としては安全は確保されたと認識しており、九電に再稼働を認める意向を伝える時期にきていると思っている。
古川康・佐賀県知事「大臣から強い言葉もらった、総理の真意分からず不満」
-経産相との会談を終え、どう感じているか。
知事 直接聞きたかったのは「なぜ浜岡原発だけを止めたのか」という疑問。大臣からは「危ない所は政治が止める」「安全な所は政治が動かす」と政治家としての発言をいただいた。これまでは確率論的な説明が続き、疑問があったが、玄海2、3号機の再稼働は国がしっかり保障するという強いメッセージをもらった。
-それは安全性が確認できたということか。事実上の運転再開容認発言なのか。
知事 私どもの疑問点はクリアされた。ただ、議会の意向を踏まえて判断すると言ってきた。この時点で、再開を容認したわけではない。
-会談では、菅首相の再稼働の考えを確認していたが。
知事 不満が残るとすれば、高経年化炉の安全性と総理の認識の二つ。総理と経産相が同じ思いと感じられず、総理が本当はどう考えているか、確かめる努力をこれから始めたい。
-同意に向けた条件は、あとは議会だけということか。
知事 三つの条件のうち立地町の意向と安全性の確認はクリアできた。ただ、県議会の議論は大変なものだ。「あと一つ」ではない。「一番大きな一つ」が残っている。
-7月8日には県民説明会がある。
知事 三つの条件に加え、総理の真意、県民説明会での雰囲気など総合的に勘案して判断する。県民説明会は、大事な節目だ。 | ||
2011年06月30日更新 |